北アメリカの ドッグトレーニング 

北米の犬のしつけ/訓練マニュアルがよく翻訳出版されているにもかかわらず、北米で一般に飼われている家庭犬の実際はどうなのか、日本ではまだよく知られていないことではないでしょうか。

 

メデアで紹介される模範になるような「立派な犬達」ではなく、一般家庭で飼われているごく普通の犬達が北アメリカではどうしつけられているのか、しつけに関心のある方にとっては興味のあることと思います。以下は私が毎日接している犬達を見て、当地の犬のしつけや訓練について私が感じていること、また考えてみたことです。

 

「どうしてカナダの犬はこんなにおりこうさんが多いのですか?」とは、日本から来られる方に私がよく尋ねられる質問です。今までうまく答えることのできない質問でした。

 

カナダの犬達

毎日犬を扱う仕事してまして気づくことは、こちらの犬は非常にフレンドリーなものが多いということです。今まで私のショップに来る犬で手におえない犬はほとんどおりませんでした。

 

日本の方が見て感心していることは、カナダではごくありふれた光景のようです。

 

たとえば、おばあちゃんがレトリーバーを連れて散歩している。ぐいぐいひっぱったりしないで、飼い主をいたわるように歩調を合わせて散歩している。

 

または「犬には必ずリーシュをつけるように」などと書いてあるサインが公園に立っています。しかし、リーシュもつけずに飼い主のわきにぴったりよりそって散歩している犬もよく見かけます。

 

またある時は、わんちゃんの飼い主が何人か公園で立ち話している。そのそばで犬達がくんくんお互いの匂いをかぎながら、お友達になっていたりする。吠えかかったり、けんかしたりする犬がいない。そんなのどかな光景のようです。

 

また、見知らぬ犬でも近付いてゆくと、しっぽをふって撫でさせてくれる犬が多いということも驚きの一つのようです。

 

日本に比べれば、カナダでは犬のしつけ教室などが手軽に受けられたり、トレーナーの方も多いと思います。しかし、プロからしつけのレッスンを受けたという話しは私の知る飼い主からはあまり聞いたことがないのです。

 

カナダの愛犬家は 特に 犬のしつけ熱心でも 教育ママ達でもない

マナーのたいへん優秀な犬の飼い主に尋ねてみても、特に訓練は何もしていないという素っ気ない答えが返ってくるのです。

 

私が毎日接している犬をみるかぎりでは、本格的なドッグ・トレーニングを受けた犬はあまりいないようです。

 

おしっこのしつけやカム、シット、スティなどの初歩的なことはだれしも自分の犬に教えていると思いますが、それ以上のトレーニングをやっている方は少ないように思えるのです。

 

ドッグトレーニング・マニュアルがよく売れているとも聞いたことがありません。本屋さんでも申し訳程度に2、3冊並べてあるだけですし、日本のように本棚がしなるほどたくさんのドッグトレーニングの本が並んでいる光景を目にすることはありません。

 

「北アメリカの愛犬家は犬の訓練にとても意識が高くて、熱心にやる人達である」という一般に信じられている説はどうも事実ではないようです。

 

私が推理する カナダの犬の性格の良さ の理由

しかしそれにもかかわらず、カナダで性格のいい犬が多いのはどうしてなのか、私にとっても長いことミステリーでした。

 

しかし、よく考えてみたら、カナダで犬がいい子に育つ理由はいくらでもあるのです。どれも常識的なことですけれど、カナダの犬の性格の良さ はこうしたことをやるだけで現れてくるもののように思えるのです。

 

例えば、カナダの愛犬家は犬を散歩によく出す人が多いです。ストレスがたまりませんから、むだに吠えたり、気晴らしに-いたずらをして飼い主を困らせることも少ないです。飼い主のいうことをよく聞きますし、散歩を十分させるだけでも性格のいい犬に育ちます。

 

それから、カナダの犬は去勢や避妊手術を受けている犬が多いです。

ボスになりたがる犬やコントロールしがたい犬が少ないです。家を汚しません。また人に対しても、他の犬に対してもマナーよくふるまえる犬が多くなるような気がします。私が今まで見てきた犬では90% 以上の犬がこの手術を受けています。

 

それから、すべてのカナダの犬はと言っていいぐらい、ほとんどのカナダのわんちゃんは飼い主の家族と家の中で自由に生活しています。犬のサイズや犬種などは関係ありません。子牛ぐらい大きな犬でも家の中でいっしょに生活しています。また飼い主と同じ寝室で寝ている犬も多いと思います。わんちゃんがこれだけ家族と密着して生活しているということは、関心を持っていつも見られていることを意味します。また、それだけ飼い主に叱られることも多いと思うのです。

 

ひところ、やっていいこととダメなことが分からなくて何度も何度も叱られ、苦労する時期がカナダの犬にはあるのではないでしょうか。

 

特に訓練などしなくても、やっていいことと悪いことの区別を犬に教える、常日ごろ好ましい行動をしたらたくさんほめてあげる。やっていけないことをしたらちゃんと叱るだけでも、分別のある性格のいい犬に育つようです。そのためにより自由を与えられ、ますますいい子に育ちます。そして、できのいい子供のように信じられて、飼い主に接してもらっている気がします。

 

あなたの犬を 名犬に育てるは

「イエス、ノーをはっきり言う」とか、やっていいことと悪いことをはっきりさせて子供や犬に伝える。そしてルールを守らせる。こんなことまでわざわざ忠告してくれるドッグトレーニング・マニュアルも育児書も見たことがありません。たぶん育児の名著と言われている「スポック博士の育児書」にも書かれていないことではないでしょうか。

 

北アメリカでこのようなことは常識的すぎて、話題にもならないことです。しかし、日本人で犬を育てる場合に、わんちゃんがマナーよく振る舞ってもそんなことは我が家の犬として当然と思って、ほめてあげることを忘れてしまう。また、犬に嫌われるのを恐れるのか、ひとこと言うべきときに注意もしない、叱りもしない。そのうち注意するのが面倒になって見て見ぬふりをするようになる、そんな方が多いように思えるのです。

 

カナダ人の親は自分の子供を自慢したり、人前でほめることが大好きです。

でも、みなさんも目にしたことがあると思いますが、人に迷惑をかける自分の子供を、周囲の人目もはばからず大声をあげて叱っていることがあります。そんなことはしてはいけないと親は真剣になって子供を説得し教えているのです。そして見のがしません。妥協しません。

 

たぶん、犬も家の中では子供と同じように扱われ、育てられていることは想像つきます。どんな小さなことでも、ほめる時は機会を逃さずほめてあげる、叱るべきときはちゃんと叱る。

 

わんちゃんをいい子に育てるためにやっていることを、しいて上げるとしたら、こんなことぐらいかもしれません。

 

あなたのわんちゃんを 名犬に育てる もう一つの条件

日本の方が驚くほど、日本の犬とカナダの犬の与える印象が違うとしたら、日本人とカナダ人の飼い主が犬について考えていること、つまり飼っているわんちゃんにこんな犬であってほしいと「期待していること」に違いがあるのではないでしょうか。

 

カナダでは、ただかわいらしいとか、犬を飼って自分で楽しければとか、自分や家族に従順であればまずまず、などと考える人は少ないと思うのです。

 

人を家に招く機会も多いですし、いろいろな場所で犬が他の人と接する機会も多いのです。人に迷惑をかけない犬、他の犬にも周囲の人にも、恐れないでフレンドリーに接することができる犬、ソーシャライズのいい犬に育てようと心がけている方が多いようです。

 

実際、カナダ人の飼い主が自慢することは、血統書や姿かたちなどではありません。周りの者にも愛される性格のよさです。そしてそうしたわんちゃんに育てたことに誇りを持っている人達なのです。

 

一時期わんゃんに注意を注ぎ、飼い主の望むことを辛抱づよく教え込まなければなりませんから、少し骨のおれることです。しかし、いったん身に付けば、犬は賢い動物ですし、飼い主が何を望んでいるのか分かるし、その後は楽です。ですから、大部分のカナダ人が考える「いい犬」に育てることは、本格的な難しいドッグトレーニングをしたり、努力を続けなければならない、たいへんなことではけっしてないと思うのです。

 

わんちゃんは 名犬になってあなたを 喜ばせようとしている

ほとんどの方が犬を飼う前に望むことは,「ほのぽのとした犬のいる生活」を楽しみたいということではないでしょうか。また「人前に出して恥ずかしくない、だれにも自慢できる楽しいわんちゃん」になってほしいと自分の犬に願うはずです。

 

それはごく普通のカナダ人がしている普通なことをやるだけで、わんちゃんが自分でそんな犬になってくれて、そしてあなたの憧れていた生活をかなえてくれる、そんな気がいたします。