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トリマーの腕に自信を持つことについて 


今年トロントを訪れてくれたもう一人の方について話したいです。
この方は4年ほど前に私のところでレッスンを受けて、現在は自分でペットサロンをもって仕事されています。

カナダに来る前は何年か日本でペットショップに勤めていました。いつか自分で仕事を始めたい気持ちがあったようです。でも自信が持てなくて、なかなかそうする勇気が湧いてこなかった。それでカナダに行ったら、今までやれなかったさまざまな犬種もできて、自分の悩みも解決できるのではと期待して来たようです。

この方の話をする前に、トリマーの方で「腕に自信がない悩み」を持つ方がいるかもしれないので、これについて少し書いてみたいです。(こういう悩みは北米ではあまり聞きません。)

職場に入ってからは皆さんが仕事するだけで忙しくて、じっくり学ぶ機会はなかなかないものです。学ぶ時期に身につけた方がいいことをそうできなくて自信がないのでは、だれを責めることもできません。

こういう悩みを後で解決することはとてもたいへんだから、学ぶ時期を大切にしてね、としか言えることないです。(参照: 
トリマーへの道はスクールに入る前にすでに始まっている >)

これが見習い期間が長く続くことや、次のステップにシフトしてゆくのが難しくなる一つの理由かもしれません。

日本のスクールでは、何人かグループで仕上げの練習するのが普通ですし、仕上げの一番重要な部分は先生などの他の人がやってしまう場合が多い。そして練習できるのが週にほんの二回などというところもまだかなりある。こういうレッスンに何か割り切れないものを感じた方は多いのではないでしょうか。でも、これが日本では何十年も続いてきたことだし、トリミングレッスンはどこでもこんなものだろうと皆さん思っている。そして悩みを抱えていても自分の努力の至らなさのせいと思うのか、だれも何も言わない。スクールに提言もしない。

それから、二年や三年スクールに行ったとしても、日本の職場ではすぐには仕上げの仕事まではやらせてくれるとは限りません。また、仕上げをやれたとしても、主任などの経験豊かな人が最後を決めてしまうところも多い。一人で仕事を任されて、全部やれるまでには日本ではしばらく年期がいる、というケースが多いようです。

もしこのような環境がスクールにも職場にもよくあることなら、「人にほめられること」が日本ではあまりないように思います。

一頭を他の人達と共同で仕上げても、自分のした仕事になりません。また、わんちゃん全体を一人でやれず、だれかに手直しされた仕事は、これも自分のした仕事になりません。そのような仕事をしたあなたをほめてくれる人はどこにもいません。

ということは、一部の方以外の多くのトリマーの人達は、スクールでも職場でも人にほめられる機会も体験も非常に少ないということです。

人にほめられることなど、他のトリマーでだれも話題にする人がいないので、そんなことたいして重要なことに思えない、とあなたは笑うかもしれませんけど、これは笑いごとではありません。
ペットトリミングに関しては、お客様にほめられることはとても大切です。

私のように長年やってきても、子供とたいして変りません。今でも人にほめられることは必要ですし、サービスの仕事をしている限り、これはこの仕事の大切な一部なのです。

この仕事はお客様にほめられてその仕事が完成し、区切りがつくように思います。 お客様にほめられないような仕事をしているのでは、この仕事をしたことにならないです。

腕に自信を持つのが難しくなる理由は、
○あまりにも長いこと人にほめられる機会がなかったから。

また、別の言い方をしたら、これはうまくこの仕事をやれている感じを持てないことですから、理由の二つ目も上げるとしたら、
○普通に収入を得るまでの仕事量をやれるまでになっていないから。それを目標にしてこなかったから。

悩みの即席解決法にはなりませんけど、上記の二点を気にかけて技術向上をめざすか、そうできる場を求めた方が、「腕に自信を持つこと」につながるように思います。

腕に自信を持つのに必要なものは、より高級な証書でも、もっと高度の技術を身につけることでも、もっとたくさんのことをスクールで「習うこと」でもありません。

何十、何百というわんちゃんを仕上げまで一人で全部して、お客様に自分のした仕事を喜んでもらい、ほめてもらう。そして自分の腕を自覚する。この体験です。これどんなに面倒でも一匹、また一匹とやってゆくしかないように思います。

仕事がうまくいった体験がなくて、この仕事を本当に好きになることもないし、この仕事をキャリアとして続けようという気にもならないように思います。

勤めてから私のスクールに来た方は自分の持つ問題をよく分っている方でした。そしていい腕をもっているしハサミもうまい。
何年か勤めていたのでプロとしての気配りのできる方だし、私のスクールに来る必要のない、それでも技術的には十分やれる方でした。

今まで勤めてから私のスクールに来てくださる方は、仕事ができなくてとか、腕が未熟だから学びに来る方は少ないです。

ほとんどの方は仕事は十分できて、その上に人並み以上に向上心のある方が多いです。ただ自信になるまでの体験を十分得られる環境が今までなかった人達なのだと思います。

こういう方でも私のところでは特別なレッスンをしているわけではなありません。日本では出会うのが難しいのも含めていろいろな犬種を一人で最後まで仕上げさせる。限られた時間である程度仕事をこなせるようになった方が独立は楽ですから、スピードグルーミングや北米の仕事のやり方に慣れてもらう。

それと、私のスクールでは、教材犬として契約しているお客様には時間があれば、この生徒が今日はあなたのわんちゃんやってくれました、とお客様に生徒を紹介することもあります。

仕事が気にいらないと遠慮もなく文句を言いますけど、めったにあることではありません。
「You 've done a wonderful job!!」「Excellent work!」とか言ってくれます。「Is that really my dog?」とか「Oh My, I've got a new puppy!!」なんて言ってくれる人もいます。握手を求められることもあります。こういうほめ言葉は残念ながら日本語にはありませんね。

お客様が犬を取りに来ると、壁越しに話しているのが聞こえるのです。
自分のした仕事がお客様の目にどう映っているのか仕事した者として気になりますし、気に入ってもらえると正直うれしいです。お客様が心からほめてくれた言葉以上に自信につながるものは他にないように思います。

とにかく、この方は今までの環境ではできなかった、周囲を気にせず一人で思い存分仕事ができ、お客様の反応がダイレクトに伝わって、自分の仕事でお客様に喜んでもらえることを確信できるようになりました。また、どんな犬種が来ても怖くなくなったし、今までよりもずっと楽にできるこちらの技術、効率的な仕事の方法も身につけたし、これなら一人でも十分やれると思えるようになったようです。

この方は現在はログハウスでできた、とてもおしゃれなペットサロンを持ってやっておられます。

この方が私のスクールに来たころはまだ新婚ほやほやで、結婚して一年しかたっていなかったのです。でもカナダにどうしても行きたい気持ちになって、実家の両親に相談したら猛反対されたようです。

でも同居していたお姑さんも旦那様も快く承知してくれて、援助も申し出てくれたという話を聞きました。

結婚したばかりなのに、しばらく家をあけるなどかなり勇気がいることですけど、旦那様が出張でニューヨークによく来られる方でトロントにも寄れたこと。それから、そのお母さんがビジネスをしている方で、嫁である彼女にも自分のビジネスを持ってやって欲しかったようです。 

ペットサロンを始めてからも、ネットワークの広いお母さんにこの面でもかなり手伝ってもらったようです。お姑さんともとてもうまくやっておられる方です。

前に紹介したステラさんでも、高校出てすぐカナダに来た二人でも、この方でも同じですけど、周りに助けがあって、それを受ける力、生かす力があることは、一種の才能なのかもしれません。でも、この人達に共通していることは、犬の仕事に本当に喜びを感じていた人達です。そしてトリマーの仕事をキャリアにしたいと心から願っていたことです。

上記の方も自信の悩みだけでなく、資金面や時間がないとか、家族のことやその他にもいろいろな問題や不安を抱えていた人です。

途中にしてこの仕事を辞めた方がいい理由や、しいて余計なことをしない方がいいのではと思える理由はたくさんあったと思うのです。でも、これらを自分の思いを中断する言い訳にしなかった方です。

この人達にとってプロフェショナルのペットトリマーになること、この仕事で食べられるようになることは、なれてもなれなくても「どうでもいいこと」ではなかったのです。絶対そうなると決めてかかっていた人たちです。そして考えているだけでなくて行動に移していくパワーがあったこと。また周りに大切にされていた人達だったと思います。

こういう条件があれば、うまくやってゆけるかどうかは心配するほどのものでもないのかもしれません。

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