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犬の組み合わせ方と毛玉処理

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私の仕事はトリミング/グルーミング・サービス専業でやっています。生体、フード、ペットグッズの販売はしていません。また、私の場合は、犬の送迎はいっさいしていません。

 お客様には時間通りに犬をショップまで持ってきてもらい、その犬ごとに何時ぐらいに終わるからとお客様に告げて、仕事が終わり次第できるだけ早く犬を取りに来てもらっています。

 北アメリカのプロのトリマー/グルーマーの平均は一日七頭、またはそれ以上仕上げるのが普通と言われていますが、どんな犬をどんなカットをしてこれだけ仕上げているかというと、大型犬、全身ハサミで仕上げるもの、クリッパーでやるケンネル・クリップ、丸刈り、テリア類などを予約する時点でこれらの犬をうまく組み合わせるのです。

 たとえば、一日のうちに大型犬が四、五頭も重なるとか、ハサミ仕上げの犬だけが集中するような予約は避けます。長毛犬種の大型犬でハサミ仕上げなら、一日一頭だけ入れるとかシャンプーだけの犬などはもっと予約に入れこむことができます。ある程度仕事がやりやすいように日をずらしたりして調整し、快適に仕事ができるような組み合わせを作ります。

 日本の方がハサミ仕上げを希望するお客様が多いのではないかと私はずっと信じていました。しかし、実際は見学したサロンよりもプードル、ビション、それからマルチーズ、シーツーなどのドロップ・コート犬種をハサミで仕上げる仕事は私のショップ、カナダの方がだんぜん多いこと、またそのサロンのある地域(東京都心に近い地域)では全体的ににクリッパー仕上げで、ごく短い仕上げを望むお客様がほとんどということを発見して少し驚きました。

 一般的にいって、長毛犬種でハサミで仕上げるものは、そのショップのやり方があり、四週間ごとに来るお客様の犬は多少の毛玉でも無料で取りましょうとか、それ以外は毛玉のない状態ならばハサミでやりましょうとお店のポリシーを決めておきます。

 毛玉になってくる犬はケンネル・クリップや丸刈りを勧めたりして、なるべくハサミ仕上げはしないようにしています。

 日本の多くのトリミングサロンのように毛玉取りに多くの時間を費やしていては、他の犬を仕上げる貴重な時間を無駄にしているだけです。

 私のいる地域では、ペットショップが申し合わせたように、かなり毛玉なのに全身ハサミで仕上げてほしいなどというお客様のわがままを許さない“空気”があるように思います。

 私も勝手が分からなかった頃は、どこのペットショップでも断わられていたような毛玉犬をていねいにほどいてハサミで仕上げていました。

 やればできるのにどうして他のお店ではこうした犬を断わるのかしら、と疑問に思っていました。しかし、よく考えてみると、この毛玉犬一頭仕上げる時間に他の犬が二頭仕上げられるのです。そして、その毛玉犬は毛玉とり割り増しチャージをしても、時間がかかったからと二頭分のチャージはできないというのが現実です。

 その上、たとえ苦労してそうしたことをしてあげても、お客様からはほとんど感謝されることはありません。お金は払った、そんなことはお客に対してやって当り前という態度をとるお客様がほとんどで、仕事の後は極度の疲れと報われない空しさが残るのが常でした。

 最初はやればできるなんて自己満足していたのですが、そうしたお客様は、毎回毛玉だらけで犬を持ってくる人がほとんどです。

 仕事する者にとってこれがストレスになるのは当然ですけれど、同じトリマーでなければ、これがどんなにたいへんな作業か、口で言ってもだれも理解してくれる人はないでしょう。

 犬にとっても毛玉取りの作業は、できれば避けたい、苦痛に満ちたたいへんなストレスです。そしてトリミング中に犬に傷を負わせる事故の大半はこの毛玉取り作業中に起きているというのも事実です。

 アメリカと違って日本のお客様は細部まで要求が厳しいし、かなりていねいな仕事をしないと満足しないのです、と誰かが言うのを聞いたのですが、何といっても家庭で手入れを怠ってかなりの毛玉なのに、全身ふわふわのパピーのように仕上げてもらえますかなどというわがままなお客様が日本では多いようですし、強引なお客様の要求に負けて、お客様のいいなりになって仕事してしまうトリマーの方が多いのではないでしょうか。

そういう悪循環の現実をつくった原因の一端はトリマーの側にもあると私は思います。

 北アメリカでは毛玉を処理するさまざまな方法や技術があります。しかし、どんなにすばらしい方法を使って毛玉を取り、見事な仕上げをしても、それが毎回犬を毛玉だらけにして連れて来て、そして家庭で愛犬の手入れをしないお客様の怠慢を許す結果になるとしたら、それは犬にもお客様にもとても不幸なことだと思います。また仕事する方も毎回苦労を強いられるということをよくよく考えてみて欲しいです。

 自己嫌悪に陥らないためにも、こうした犬にはケンネル・クリップや丸刈りを勧めてみるのもひとつの方法です。ふわふわにできないのは、トリマーであるあなたのせいではけっしてありません。

 お客様の家庭での手入れに問題があるのですから、お客様が望むスタイリングをするには何が必要なのか、仕事前にこうしたお客様を説得することや、家庭での手入れについてお客様へアドバイスすることがプロにはとても大切なことではないかと思います。

 お客様の協力なしには、私たちもいくらいい腕をもっていても、満足できる仕事ができないのではないでしょうか。

クリッパーで毛玉犬をやるにしても、少しでも長く毛が残るようにこの道具を使う方法と、それに適した替え刃があります。

 またマルチーズ、シーツー、ヨークシャー・テリアなどの毛の立たないドロップ・コート犬種で短くしてほしいと言われた場合、日本のサロンでバリカンを使っているのを見たのですが、バリカンの刃の長さの選択があまりなく、体につけて使うか、浮かして使うしかありません。これではこうした犬種にしてはあまりにも毛が短すぎ、とてもルックスがいいとはいいがたいこと。必要以上に時間をかけ、必要以上に毛を短くしているように思えました。

 北アメリカでは毛の長さをお客様の好みでいろいろな長さで残す技術があり、よりきめの細かいサービスを与えることができます。犬の毛質や毛の状態でいろいろな刃を使い分けて仕事します。日本では知られていない、この北アメリカの技術はにぜひ紹介したいもののひとつです。 

 

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